昭和20年、広島・呉。
わたしは ここで 生きている。
今、日本中の注目を集めている映画がある──『この世界の片隅に』。
12月3日(土)に開催された「第38回ヨコハマ映画祭」では、『シン・ゴジラ』や『君の名は。』など今年、数々の話題を振りまいた作品を押しのけ作品賞を受賞。東京でのメイン上映館・テアトル新宿では、公開後1週間の観客動員数を10年ぶりに塗り替えるほどの反響となり、現在でも満席・立ち見になるほどの盛況をみせています。また、配給元である東京テアトルの株価がストップ高を記録し、大きな経済的効果をもたらすなど各所にその影響が現れています。
そして、特筆すべきは、一般上映にもかかわらず上映後に巻き起こる拍手喝采。
この映画の何が、そこまで人の心をとらえるのか……。
主人公・すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。昭和19年に呉に嫁ぎ18歳で一家の主婦となります。いろいろな“物”が不足していく中で、どこにでもある、変わらない日々の暮らしをおくる すず。けれど、戦争は深刻化していき、日本海軍の基地だった呉は何度も空襲に襲われるようになります。市街地は荒れ果て、軍艦は炎を上げ、大切な人も奪われてゆく……。そして、昭和20年の夏がおとずれる。
原作は、こうの史代さんの同名漫画。『漫画アクション』で2007年1月23日号から2009年1月20日号までの約2年間に渡って連載されていた作品を、クラウドファンディングで資金を集めて映画化までこぎつけました。上映開始当初の上映館数は少なく、全63館。しかし、映画を観た人の口コミからその人気に火がつき、今や上映劇場は全国で100館を超えるまでになりました。全国動員ランキングも1週目、2週目:10位、3週目:6位、4週目:4位と記録を伸ばしています。
この映画で絶賛されているのが主人公・すずの声を務めた能年玲奈さん改め「のん」さん。インタビューで「戦時下って自分とは別次元のまったく違う世界だと感じていて、怖さもあったし戦争ものは目をそむけていたところがあったんですけど、原作は毎日の生活の部分がすごく大切に描かれていて、幸せな気持ちになれた。だからいっそう、戦争の怖さも感じました」と語った、のんさん。
映画の中で、すずさん そのままに戦時下の日常をほんわかした声で演じ、また、変わりたくなかった自分、知りたくなかった「戦争」に直面し、その憤りを爆発させます。
そして『この世界の片隅に』の中で重要なのが、片渕須直監督によって細部まで丁寧に描かれた「日常」です。この「日常」から、今まで遠い昔のことだと思っていた「戦争」という世界が、自分たちと関わりのある、地続きの世界なんだということに気づかされます。戦時中も今も変わらず、「今日」、たとえ自分たちの世界が覆っても、明日もあさっても、次の月も、次の年も日々は続いていく……。知っていたのに、見えていなかった戦時下の中の日常。そんな“当たり前”を教えてくれるのです。
各界の著名人も賞賛するこの作品。
スピーカーズ講師の山本寛氏もオフィシャルブログなどで数回に渡り『この世界の片隅に』評をし、「2016年アニメ映画のナンバーワン」と絶賛されています!
山本寛氏が語るアニメーションの世界についての講演やトークショーの依頼はコチラから!
【山本寛氏 オフィシャルブログ】
『この世界の片隅に』・評|山本寛オフィシャルブログ
『この世界の片隅に』・評2|山本寛オフィシャルブログ
『この世界の片隅に』・評3|山本寛オフィシャルブログ
『この世界の片隅に』4|山本寛オフィシャルブログ
【岡田斗司夫氏との対談】
山本寛監督『この世界の片隅に』を語る|ニコニコニュースORIGINAL
この映画は、「戦争」を描いた作品です。
でも、この映画ほど「日常」という平和を語ってくれる作品はなかったのではないでしょうか。
明日も、あさっても、次の月も、次の年も、また次の年も……、
当たり前の「日常」が続いていきますように。
『この世界の片隅に』
声の出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 / 澁谷天外
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル