みなさんは「ほぼ日新聞」をご存知でしょうか。
日本を代表するコピーライターの糸井重里氏はそれまで、東京糸井重里事務所という個人事務所を拠点に活動。
しかし、2016年に株式会社に移行。
2017年3月にジャスダックへ上場を果たしました。
インターネットを拠点としてコンテンツを作成し続けていた糸井重里氏ですが、ここにきて上場するに至った理由が気になっていました。
『ほぼ、上場します』は56ページのペーパーバック。
冒頭に標準読了時間は約20分と書かれていましたが、ちょうどそのくらいで読み終えることができました。
週刊東洋経済に掲載された内容を切り出して編集し、電子書籍化したものを印刷したものです。
糸井重里氏といえば、私にとっては「となりのトトロ」のさつきとメイの父親役の声優のイメージ。
このへんないきものは まだ日本にいるのです。たぶん。
というキャッチコピーも糸井氏が作成したものです。
「自然派」というか、あまりおカネに執着がなさそうな糸井氏がなぜ株式会社を上場することにしたのでしょうか。
それにはほぼ日の規模が拡大してきたこと、糸井重里氏の年齢的な問題という2点が前提にあるそうです。
「当初は存続が目標じゃなかったけれど、これだけ大きな数のお客さんがほぼ日を支えてくれている」
「僕がいなくなってからその面白さを維持できるか。」
(同書9Pより一部抜粋)
-つまり、上場は糸井さんが後輩に組織を託すうえでの仕組み作りになる。かつ、その過程でも得るものがたくさんあるということですね。
「結局、上場できませんでした」ということになっても、これだけのことを話し合った会社はあるのだろうか、というのをファイルにしたい。
(同書13-14Pより一部抜粋)
このインタビューは株式上場以前のものですが、上場を考えるうえで利益を追求するだけでなく「組織のマネジメント」と「ファンを悲しませない」ことを念頭に置いていることがわかります。
それにしても、企業の存続のために株式上場という制度を利用するというのは、私にはない視点でした。
と同時に、上場できなかったとしてもそれを本にして販売すればそれはそれでヒットコンテンツが生まれるだろう、という糸井氏の能力を最大限活かすしたたかさも。
-ところで、上場して得る資金は何に使うんですか。
「本当はいらないと思っていた。でも、ついにわかった。人だったの。工業社会の時代には、機械と工場が価値を生んだ。でも今、価値を生み出すのは人。人が欲しいんですよ。」
「職がないという人がいるのに、どうやって人を減らせるかと考えすぎるのは、あんまり優しくないなと思って。」
(同書18-19Pより一部抜粋)
「優しい」会社であろうとするほぼ日。
そして優しくあり「続けよう」とするのが上場の目的だったのですね。
糸井氏のワンマン経営からの脱却をするうえで、株式上場のための仕組みを取り入れて組織を整備する。
資本家から得た資金はほぼ日の価値を生む源泉、人への投資へ利用する。
糸井氏の資本論はGDPでは計測できないかもしれませんが、持続可能な社会を目指すうえでの礎となりうる考え方ではないでしょうか。
speakersでは糸井重里氏の講演依頼の問い合わせをいただくこともございます。
皆様からのお問い合わせをお待ちしております。
年内のblog更新は本日が最後となる予定ですが、大変お世話になりました。
2018年もお引き立ていただきますようよろしくお願いいたします。
speakers.jp(株式会社タイム)