いよいよ3/11(土)より、エドワード・ヤンの代表作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』が、25年のときを経て4Kレストア・デジタルリマスター版でリバイバル上映されます!!
エドワード・ヤン(楊徳昌)は、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)と並び、台湾ニューシネマ(1980~90年代の台湾版ヌーヴェル・ヴァーグとも呼ぶべき新たな映画の潮流)を代表する映画監督で、2000年には『ヤンヤン 夏の想い出』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞するなどその才能が高く評価されていましたが、2007年に結腸癌によって惜しまれながらも59歳で生涯を閉じました。
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は1960年代初頭に台北で起こった実際の事件をもとにしており、受験に失敗して不良グループとつるむようになった主人公の少年が、恋する少女を殺してしまうという衝撃的なストーリー。
ちなみに英語のタイトルは“A Brighter Summer Day”となっています。
台湾の中心都市・台北では、第二次大戦後に日本人が引き上げたことにより人口の1/3が流出し、経済は危機的な状態に陥りました。1947年には「二二八事件」と呼ばれる民衆弾圧事件も起こり、その後の歴史に大きな影を落としました。
一方、1950年代に入ると中国から移り住む人々(外省人)が急激に増え、1960年代には人口が戦後の20万人から100万人へと急増。
「戦後、新天地を求め中国から台湾に移住した外省人。その焦りと不安は、ある種の熱気となって、子供たちの社会に映し出された――」と映画予告編にもあるように、高度経済成長を迎える前段階の変革期において、都市開発が急速に進められるにつれて社会のひずみも大きくなり、少年事件として先鋭化することになりました。
(こうした戦後台湾の歩みについてはSpeakers講師の金美齢氏が詳しいです)
近年、日本でも痛ましい少年事件が後を絶ちませんが(Speakers講師の阿部祐二さんは自身の取材体験をもとに少年事件などについても講演されます)、特殊な個人の問題と片付けてしまうのではなく、事件を社会全体の問題として捉えなおすためにも、「牯嶺街少年殺人事件」は様々な示唆に富んでいるのですが・・・
問答は無用だ。
だまって映画館にかけつけ
この真の傑作にうちのめされるがよい。
――蓮實重彦
という映画批評の御大のお言葉を守りたいと思います。
『牯嶺街少年殺人事件』の上映時間は実に3時間56分に及びますが、未見の方はきっと新たな映画体験を味わえることでしょう。
ちなみに、同じく少年事件を扱っている青山真治監督の『EUREKA(ユリイカ)』(2001年)は3時間40分ですが、こちらもオススメ。
宮崎あおいさんの存在を一躍世に知らしめた傑作でもありますが、兄妹役でこの映画に出演している宮崎将さん(宮崎あおいさんのお兄さん)の姿には、クーリンチェの主人公(チャン・チェン)にどこか近い物を感じます。
(青山真治さんは2009年の『共喰い』でも、今をときめく菅田将暉さんの才能を見事に引き出しています!)